2023年5月29日「今日のワン」メッセージ
「神の国サミット」
聖霊降臨の祭日を迎えました。今日、お祝いする聖霊降臨の出来事は、教会の誕生を記念するお祝い日です。今日の聖書と典礼のパンフレットの表紙には、絵本作家でもある大阪教区所属の原田陽子さんという方が聖霊降臨の場面を描いた版画絵が掲載されています。上段には、マリアさまと弟子たちが共に集まっている彼らの上に、神の愛である聖霊を象徴する赤い炎が降っている様子が描かれています。そして、下段には弟子たちが聖霊に導かれて家の扉を開いて外へと出て、人々にイエスさまの福音を伝えていく姿が描かれ、教会の始まり、教会が誕生した場面を表わしています。
今日の第一朗読で読まれた「使徒たちの宣教」の箇所(使徒言行録2・1-11)をこの絵で表しています。「全世界に行って福音をのべ伝えなさい」と、イエスさまの使命を託された弟子たちのうえに聖霊が降ると、彼らは神の愛に満たされ、力づけられて、イエスさまの福音を伝えるために出かけていきます。その弟子たちが語る神の言葉が、言語や人種、宗教、文化の違いを超えて、すべての人々の心に伝わり、広められていく神秘的な光景が今日の「使徒たちの宣教」の箇所で語られています。
今日の福音箇所(ヨハネ20・19-23)では、家の戸に鍵をかけていた弟子たちのもとに、復活したイエスさまが現れ、「あなたがたに平和があるように」と言い、また「聖霊を受けなさい」と言われて、弟子たちに「赦しの使命」を託されたことが記されています。イエスさまが身をもって示された神様の愛と平和を伝えていくことが教会の使命であることを、今日の福音箇所も伝えています。

ところで、今日のパンフレット表紙絵には次のようなテーマのタイトルが付けられていました。「扉を開いてー光さすところへ」。聖霊に心の扉を開いて、という意味合いが込められているようです。この表紙絵を眺めていると、先週末、広島で開催されたG7サミットのことが思い出されました。7か国の首脳が集まり、それだけでなく急遽、戦禍にあるウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、G7以外の首脳とも会談し、ニュースで大きく報道されました。戦時中にある1国の大統領が自国を離れることは大きな決断でしょうが、それでも他の国々との協力と支援を得るためにサウジアラビアとの会談を終えて、その足で今回の日本でのサミットにも参加しました。その他国との協力には武器支援という現実的な問題もありますが、このゼレンスキー大統領の精力的な外交活動がウクライナにとっても、また世界に向けても有益な成果を強調するものになったと思います。また、このことが今回のサミットが原爆地である広島を会場として行われたことに、さらに深い意味をもたらし、世界に対して平和的解決の実現に向けた一致と協力をアピールする大きな機会にもなったと思います。このG7はもともと、ついこの間まではG8でした。ロシアが参加していた集まりです。そう思うと、一刻も早くこの集まりにロシアも戻って来ることができるように、平和的解決の実現に向けた対話と連帯への道を切り開いていってほしいと祈るばかりです。
先日、今回の広島でのサミットを前に、広島でサミットが行われる意義について、大阪教区の前田大司教さんが朝日新聞のインタビューに答えていた記事を目にしました。その記事の中で、大司教さんは教皇ヨハネ・パウロ2世がかつて広島へ訪れた際に行った平和アピールの言葉を取り上げ、「戦争は人間の仕業です。しかし、戦争が人間の仕業であれば、平和も人間の仕業で実現することができます」という力強い励ましのメッセージを送っていました。大司教さんのこの言葉が自分の中でとても心に響きました。そのために、現実的な問題を抱えているその道は険しくても、諦めることなく、互いの違いを認め合って共に歩むための対話の道を見い出していかなければなりません。「違い」があるというのは、本来お互いを生かし合うために与えられた神様からの恵みの豊かさです。
今日の第2朗読で読まれたパウロの箇所(一コリント12・3b-7,12-13)も、そのことをコリントの教会の人々に伝え、一致と平和を実現する為には神様からそれぞれに与えられた恵みと賜物が全体の益となって、聖霊の働きのうちに一つとなるようにと諭しています。
「体は一つでも、多くの部分から成り、体のすべての部分の数は多くても、体は一つであるように、皆が一つの霊を飲ませてもらったのです」と、今日の聖霊降臨の出来事の意味について証ししています。
愛を生きるうえで不完全な私たち人間ですが、大司教さんの言葉にもあるとおり、平和も人間の仕業で創り出すことができます。その歩みを続けていくために、今日教会の誕生をお祝いする聖霊降臨にあたって、弟子たちの心に注がれた同じ聖霊が私たちの心も神の愛で満たし、新たにしてくれますように。各国の指導者たちのうえにも、その恵みを願いながら、最後に「聖霊を求める祈り」を唱えて結びたいと思います。
聖霊、来てください。あなたの光の輝きで、わたしたちを照らしてください。貧しい人 の父、心の光、証しの力を注ぐ方。やさしい心の友、さわやかな憩い、ゆるぐことのな いよりどころ。苦しむ時の励まし、暑さのやすらぎ、うれいのときの慰め。恵みあふれ る光、信じる者の心を満たす光。 あなたの助けがなければ、すべてははかなく消えてゆき、だれも清く生きてはゆけない。 汚れたものを清め、かわきをうるおし、受けた痛手を癒す方。かたい心をやわらげ、冷 たさを暖め、乱れた心を正す方。あなたのことばを信じて、より頼む者に尊い力を授け る方。あなたはわたしの支え。
恵みの力で、救いの道を歩みつづけ、終わりなく喜ぶことができますように、アーメン。
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