2022年4月16日「今日のワン」メッセージ
「綱引き」

「大岡越前の守による裁き」というお話の中に、本当の母親を見抜く越前の守のエピソードがある。大岡越前の前に、この子どもは私の子だと名乗り出てきた二人の母親がいた。それに対して、越前の守はこの子どもの手を離さなかった方が本当の母親だと認めると命じた。母親と名乗る二人は、子どもの手を引っ張り合うが、あまりの痛さに子供が泣き声をあげると、一方が思わず子どもの手を離した。そこで名奉行大岡越前が「真の母ならば、我が子が泣くのを聞いて、手を離さないわけがない! 手を離したのが本当の母親だ!」と言って、めでたし、めでたしで終わるお話。
ウクライナを中心に欧州とロシアによる綱引きを前に、欧米と同じようにロシアの軍事進攻を国際法違反だと訴える日本は、今後どのような姿勢で対応していくのかが問われている。
安保法案改正可決に基づく自衛隊の支援派遣についても懸念される。今のロシアのような暴君を前にして、机上の空論どおりに行くのだろうか。本来、この法案は核の傘を盾に自国の犠牲者を最小限にとどめたい米国にとって日本の自衛隊を戦地に送ることを可能にするように仕向けられた法案であって、言葉というのは使い様で実態を反映した言葉などは使わない。日本が核兵器禁止条約に参加しない理由もそうだ。
ある専門家は、日本は今世界に向けて「知の再武装」による主張を発信することが問われていると指摘している。それは主に2つ。
➀国連憲章に基づく北方領土四島の帰属の正当性を訴えること。それは、「戦争による領土拡大を認めない」という国連憲章の基本方針に基づくこと。
➁核兵器禁止条約に参加し、「核保有国が核を持たない国への攻撃禁止」ルール形成し、先導すること。ウクライナはソ連崩壊後、世界第3位の核保有国であったが、国際社会の交渉の末、核を放棄した国として核の非核化の先行モデルとなっている。このことは被爆国である日本ゆえに世界に向けて発信していくかが問われている。
「他の核非保有国からも核兵器禁止条約には賛同しないという国もある」という批判を回避した日本政府の核抑止力の理由も、実態を反映した言葉ではない。揺るぎかねない核の傘という根幹は、今回のウクライナ危機を前にした民主主義の根幹が問われている問題でもある。その意味において、上記の日本の「知の再武装」という2つの提言は、民主主義の劣化を食い止める処方箋とも言えるかもしれない。核を手放したウクライナに対する支援、そして大衆の反逆という暴挙に躍り出た危険なナショナリズムと化した民主主義のロシアとの綱引きを前に、民主主義国家としての日本の威信が問われている。
今日のみことば:「ソロモンは命じた。『生きている子を二つに裂き、一人の母親に半分を、もう一人の母親に半分を与えよ』。生きている子の母親は、その子を哀れに思うあまり、『王様、お願いです。この子を生かしたままこの人にあげてください。絶対に殺さないでください。』と言った。ソロモン王はそれに答えて宣言した。『この子を生かしたまま、さきの女に与えよ。その女がこの子の母親である』」。(列王記上3・25-26,27)
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